23.06.01 24.07.04 更新

<卒業生インタビュー>宍戸園カフェ オーナーバリスタ 宍戸優仁さん

卒業生
東京校
飲食店開業コース
JBAバリスタライセンスコース

「ウィズコロナ」の時代。外食産業を担う卒業生たちは、今どのような心持ちでビジネスをしているのでしょうか?最前線で活躍されている卒業生にヒントをもらうべく、「宍戸園カフェ」オーナーバリスタ・宍戸優仁さんにインタビューを行いました。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでのコース名、卒業年次をお教えください。
16年にバリスタコースを卒業し、その後、カフェドリンクコース、カフェプランニングコースを受講し17年に卒業しました。
僕は、コーヒーは素人でした。前職は銀行に勤めていたので、飲食経験はまったくありませんでした。コーヒーについて学びたかったことと、バリスタの資格が取得できるということでバリスタコースを選びました。

 

 

―――― クラスは何名くらいでしたか。またスケジュールも教えてください。
仕事を続けていたので、土曜日の夜だけ恵比寿校舎に通っていました。どのクラスも10名ほどクラスメイトがいたかと思います。

 

 

―――― そもそもの質問で恐縮ですが、さまざまなスクールがある中でレコールバンタンキャリアカレッジ東京校を選ばれた理由を教えてください。
知り合いが体験授業を受けて、スクールの雰囲気がとても良かったという話を聞いていました。もうひとつの決め手になったのが、自分の母校が代官山だったんですよ。レコールバンタンキャリアカレッジのすぐ近くにある中・高校に6年通っていたので、とても馴染みのあるエリアだったことも良かったです。

 

 


―――― そうだったんですね!レコールバンタンで学びたい、身につけたい目標は何でしたでしょうか?
大学生の時から「カフェをやりたい」と漠然と考えていました。ただ、コーヒーのことは何も知らなかったですし、バリスタの世界も知らなかったので……。
入学して授業を受けてみたらとても面白くて、学んでいくうちにコーヒーにハマっていったというのが正直なところです。
入学前は、コーヒーって「こういう味」しかないだろうという認識がありました。学んでいくと、深い味からまるでスープのような味わいまで、ピンからキリまであることに驚きました。コーヒーでここまで幅広い味を出せるのか!と。
また、「牛乳も成分調整牛乳、無脂肪牛乳、加工乳などいろいろな種類があって、コーヒーとの相性があり使い方も考える必要がある」というお話もあり、どんどんのめりこんでいきました。
エスプレッソの機械を扱うのも初めでしたが、マシーンの扱い方も教えていただいたので練習用に購入するときも不安はありませんでした。メンテナンスの方法、掃除の仕方、部品を定期的に交換することなど丁寧に教えてもらいました。

 

 

―――― 印象的だった講師、授業は?
篠崎講師。とにかく優しかったです。あのレベルになると、プロですし厳しい目線もあると思うのですが、篠崎講師にはなんでも聞ける雰囲気がありましたね。コーヒーの淹れ方だけでなく、マシーンを購入するときも親身に相談に乗ってくれました。
「エスプレッソマシーンの購入を検討している」と相談したら、「校舎にちょうど同じマシーンがあるから練習してみますか?」と声をかけてくれたんですよ。自分は、半業務用マシーンを購入して、練習用と業務用にしようと思っていたので、親切に教えていただけてとても心強かったです。

 

 

―――― レコールバンタンキャリアカレッジでの学びが「実践的だった」「今のビジネスに活かされている」と感じることはありますか?
とても感じます。素人から、バリスタの資格「一般社団法人日本バリスタ協会」(レベル1)を取得するまでに技術を上げてくれました。店としてちゃんとやっていけるレベルにまで上げてくれます。もちろん、資格を受験しないという選択肢もありますが、ほとんどのクラスメイトは受けていましたね。

 

 


―――― バリスタコースをご卒業後、カフェコースを追加受講されているのはなぜですか?
篠崎講師からもドリンクについて教えてもらっていましたが、ドリンクメニューを中心に店をやりたいと思っていました。なので「もっと学びたい」と思い、カフェドリンククラスを受講しました。
プランニングの宮崎講師は料理人ですし、知識も豊富。コーディアル※1なども教えていただき、ドリンクの幅がさらに広がりましたね。

 

 

―――― 在学中に印象的だったイベント、販売実習などはありますか。
卒業生のお店・ギリギリカフェさんに見学に行ったこと。ギリギリカフェのオーナーさんはとても話しやすく面白い方でした。また、飲食店経営のプラスもマイナスも話してくれるのが良かったです。
中目黒の「はな豆」さんにも、見学に行きました。内装を佐々木先生が手掛けられていて、木をふんだんに使っていて和な感じでしたね。はな豆さんはテイクアウトやデリバリーを導入されていて「そういうやり方もあるんだな」と参考になりました。

 

 

―――― 在学中、アルバイトなどで飲食業界の経験をされていましたか?
自分は、やらなかったです。バリスタコースに通っていたときは仕事をしていたのもあります。カフェプランニングコース在学時は仕事を辞めていましたが、家でエスプレッソマシーンを使ってコーヒーを淹れる練習に励んでいました。

 

 

<卒業後について>
―――― 開業された経緯をお教えください。
さかのぼると、大学受験の時にブラックコーヒーを飲んでコーヒーが飲めるようになり、カフェ巡りをするようになりました。そのうち「カフェをやりたい」という気持ちが芽生えました。就職活動でも、コーヒー関連の会社を受けたもののすべて落ちまして。「これは自力でカフェをやらないと」と感じていました。銀行に入行しましたが、ほとんど遊ばずにずっと貯金をしていましたね。また、飲み会でも「カフェをやりたい」と周囲に伝えて、辞めやすい状況を作っていました。社会人4年目くらいで、ある上司が背中を押してくれたんですよ。飲みの席で「お前は、いつ夢を始めるんだ。行動で示さないと辞めさないよ」と言って応援してくれたんです。それで火が点きましたね。レコールバンタンキャリアカレッジのバリスタコースに通い始め、卒業後に開業しました。自分が開業するときに花を持たせてくれて、オープン後も店に足を運んでくれました。
僕らはお客さんに来ていただく職業なので、人との関係を悪く断ち切っちゃうと、何かしらの形で出てきちゃうと思っているんです。

 

 

―――― 場所、店名、コンセプトについてのこだわりを教えてください。
<場所>
男なので「全部、自分ひとりでやりたい感」はありました。物件も探さないといけないかなと考えていたんですが、父親が実家で養蜂をやっているのでその敷地内で経営しています。カフェのプランニング授業でもその旨を話すと、宮崎講師に「ぜひ、バックグラウンドを活用したほうがいい」と助言をいただき、素直に受け入れることにしました。プロ講師の太鼓判もあるし、上手くいきそうだなと思ったんです。
意を決して父と母に相談したところ、ふたりとも「ずっとカフェはやりたかったけれど、他に仕事があってできていなかった」と言うじゃないですか。ハチミツの商品もあったんですが、いかんせん売り場がなかったんです。利害が一致したので、1,000万円の資金を3分の1ずつ出し合って無借金でスタートしました。
<店名>
店名はスッと決まりましたね。お店の名前は重要で「シンプルなほどいい」と授業で習いました。父が「宍戸園」という名前で蜂蜜をやっていて、10年くらい使っていたので認知もされている。名前の下地ができているので「宍戸園カフェ」にしました。宮崎講師に相談すると「宍戸園カフェがいいんじゃないですか」とフィードバックをいただけたのも大きかったです。
<コンセプト>
自然栽培農園宍戸園のショップ&カフェとして、地域に開かれたオシャレな場所でありたいと思っています。

 

 

―――― 特にオススメのメニューについてお教えください。
いちばんは、父のハチミツを使っているハニーレモンのドリンクですね。あとは、僕自身が10年ほど茶道を習っていることもあり、抹茶ラテを出しています。
コーヒーはもちろんオススメですが、夏はかき氷もよく出ます。

 

 

―――― 豆は、どのように仕入れていますか?
自家焙煎ではなく、焙煎屋さんに頼んでいます。篠崎講師も「焙煎屋さんに頼んでいる」とおっしゃっていたんです。プロ中のプロも人に頼んでいるんだ、ということが頭の片隅にあったんです。開業する前は自家焙煎もやろうと考えていましたが、総合的に考え、ブレンドの味を決めて作ってもらっています。
お店は、父と母の知り合いの地域の焙煎屋さん。お互いの性格も近しくて意気投合しましたし、「地域の繋がり」を大切にしているという側面もありますね。

 

 

―――― 開業されて経験されたご苦労についてお聞かせください。
めちゃくちゃ苦労したのは、エアストリームの研磨作業。二度とやりたくないなと感じました(笑)全体を3~4回磨き直さないといけないんです。粗く削って、細かく削って鏡みたいにピカピカに研磨していかないといけないんですが、その作業が地獄というか……。父とふたりで磨きましたが、開業前に「研磨職人」になるんじゃないかというくらいハードでした(笑)もしエアストリームで開業を検討している方がいたら、研磨は業者さんに任せてもいいと思います。
もうひとつは、保健所の審査。とても緊張しましたね。佐々木講師に内装をお願いしていたので、保健所の対応の仕方についてもアドバイスをもらえていたのは良かったです。
ちなみに、保健所との事前やり取りも、実際に審査に来てくれる方と相談しないとダメです。審査日に来てくださる方と直接相談しましょう。

 

 

―――― コロナウィルスの流行で、工夫された点、心がけていらっしゃることについて教えてください。
開業したのは2018年の7月7日でした。正直に言うと、コロナ対策で何かをしたということはないんです。人が密にならない環境、「大丈夫な要素」がたまたま揃っていて、これはもう偶然というかラッキーとしか言いようがないですね。
まず、オープンテラスがあるので外で気兼ねなく飲めます。「飲食店」といってもドリンク専門なのでテイクアウトもできます。立地も駅前ではないので、人が多く集まるわけでもなく密になりにくいです。ペットを連れている人の散歩コースにもなるくらい、店の前には畑が広がっていて、公園も近い。緑豊かな場所です。
ウチがやる対策といえば、アルコール消毒と換気。あとは、レジについても増税前のタイミングで、電子マネー決済を導入していました。予想していなかったですが、対応できたんです。
緊急事態宣言中も、チェーン店のコーヒー屋さんは軒並み閉まっていましたよね?ウチは、あえて営業していました。コーヒー好きな方は行き場所がないから、せめてウチだけでも居場所にしようと思ったんです。結果、売上げはものすごく伸びました。コロナ禍を乗り切れただけではなく、常連さんも増えました。今も、皆さん変わらず来てくれています。あとは、自分ひとりで営業しているので遠出はしません。密になるよう場所や、感染の可能性があるようなところには行かないようにしています。

 

 

―――― 飲食ビジネスの面白さ、喜びについて教えてください。
お客さんと親身に喋れるところですね。自分の提供したいものを提供して、お礼を言ってもらえて、お互いが気分良くいられるのが醍醐味だと思います。前の仕事もやり甲斐はありましたが、地域の人と仲良くなることはありませんでした。今は、知り合いが増えて仲良くなれたりする。年齢は違えども友だちになれたりする。そこがいちばんの魅力だと思います。
もうひとつは、自分の時間は自由に使えるので、その間に好きなことをやれるという点です。突き詰めすぎたり、プロ志向を極めすぎたりすると苦しくなるかもしれませんが……。自分は「楽しい」方に軸を置いているので、お店としてのクオリティを保ちつつ自分の楽しさも優先できています。自分が楽しくコーヒーを淹れるからこそ、お客さんも楽しい。自分がストイックになり過ぎると、それはお客さんにも伝わってしまうと思うんです。
また、開業にあたって、固定費がそんなに掛かっていないというのもありますね。どこかから借金をして、従業員を雇ってというスタイルだと回せない。楽しくできているのは自分の土地でやっていて、かつ建物ではなくエアストリーム、無借金でというところもあります。自分ひとりで回せているので、「楽しさと現実的な経営」という理想を実現できていると思います。

 

 

―――― では、大変さはどのようなところでしょうか。
一般的なお店とは違うと思いますが……ウチはオープンテラスで庭があるので、虫対策は苦労します。虫よけは掛けてぶら下げるアイテムなど、やることはやっています。養蜂をしていてハチも飛んでいるので殺虫剤は使えませんし、ペットにも配慮しなくてはいけませんね。
もうひとつはトイレ。個人的に、店の清潔さの基準になると思っています。お店のトイレが汚いと、仮に店内がキレイだとしても女性の方は来ない。なので、トイレ清掃は人一倍気を付けていますね。

 

 

―――― 飲食業界で活躍するうえで必要なことはどのようなスキルだとお感じでしょうか?
まず、美味しいというのが大前提になります。
お店の宣伝は、口コミで広めてもらうのがいいと思います。ホームページとか色々なツールがありますが、地元のお客さんと仲良くなり、その方たち経由で広めてもらうと手堅いです。お客さんがいいと思ってくれたら、「食べログに掲載していいですか?」と聞いてくれたりします。
自分は、InstagramとかFacebookは運営しておらず、母が中心になってアップしていますが、お金を出した広告よりも宣伝になると感じますね。
それから、仲良くなった常連さんは、何かあった時に助けてくれますよ。例えば、コロナ禍でアルコールがなかった時、地元の方がアルコールを融通してくださいました。

 

 

―――― ありがとうございました。最後に、レコールバンタンキャリアカレッジへの入学を検討されている方にメッセージをお願い致します!
迷っていたら、とにかく体験入学してみたらいいと思います。本入学はお金がかかるので、その人の経済面や時間など、足踏みする面もあると思います。
財布はマイナスになるかもしれないけれど、精神面、技術面は必ずプラスになります。自分もどうしようか迷ったけれど、「イケる!」と信じて進んで今の形になりました。プロ講師たちは、リアルに開業への道筋、夢と現実を教えてくれました。入学したことで、漠然としていたことが、現実に落とし込まれて形として見えてきました。プロが10数年かけて身につけることを、一瞬で教えてくれるわけですよ。その効率の良さを考えればお金を出しても安いと思いますし、何にも代えがたいと思います。下地0の素人の自分でも、こうしてできた開業して上手くいって、コロナもなんとか乗り越えています。もちろん、何かの真似だけでは生きてはいけません。自分ならではのアイデアやセンスは必要です。自ら考えて店を作り、維持していくのは大変ですが、自分の力になります。店を長く続けていくなら、アイデアとやる気を持ち続けていくといいと思います。

 

 

宍戸さんの、店舗の作り方、「楽しむ」姿勢、経営スタイルは、これからの飲食店のロールモデルと言えるかもしれません。貴重なお話をシェアしてくださり、ありがとうございました!
※1……ハーブや果物をシロップに漬け込んだノンアルコール濃縮飲料。水や湯で割って飲んだり、料理・菓子・カクテルなどにも用いられる。

 

 


宍戸園カフェ
東京都世田谷区上祖師谷4丁目7-1
https://www.facebook.com/shishidoen/
https://www.instagram.com/shishidoencafe/?hl=ja

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